動物は奪い合うのに、植物は平和「それは光合成のおかげ」

動物は奪い合うのに、植物は平和「それは光合成のおかげ」

植物をじっと見ていると、うらやましくなりませんか。
植物はその場所をずっと動かず、他者から奪うことなく、静かに生きています。
ところが動物はというと、例えばライオンはシマウマを襲って食べなければ生きることができません。シマウマはライオンに襲われないように、脚力を鍛えて逃げなければなりません。人間にいたっては、他者から奪うために人殺しをしたり、戦争まで引き起こしたりします。

このように生き方の違いを哲学的または詩的に考えると、植物は尊く、動物は愚かで、人間はさらに愚かなように感じます。
ただ、エネルギーの獲得の観点から考えると、植物の生き方と動物の生き方に大きな違いがあるのは仕方がないようです。

動物は自分でエネルギーを生み出せないので、動き回って他者から奪ってエネルギーを獲得するしかありません。しかし植物は、身の回りのありふれたものだけで、自分の体内でエネルギーをつくることができるので、平和に暮らすことができています。

植物が平和なのは、光合成をしているからです。
したがって、人類が人工的に光合成を実行できるようになれば、世界平和が訪れるかもしれません。そして人工光合成は、夢物語でなくなりつつあります。

エネルギー獲得機構が体内にあるか体外にあるかの違い

エネルギー獲得機構が体内にあるか体外にあるかの違い
エネルギー獲得機構が体内にあるか体外にあるかの違い

植物も動物も生物である以上、1)誕生して、2)エネルギーを獲得して、3)排泄して、4)成長して、5)死ぬ―の5つのことをします。
そして、植物と動物の生き方を大きく変えているのは、2)のエネルギーの獲得方法です。

動物が動き回って他者から奪ってエネルギーを得るのに対し、植物は光合成をしてエネルギーを得ます。
光合成は植物の体内で行なわれます。動物が、エネルギーを外から体のなかに入れるのに対し、植物は体内でエネルギーをつくるわけです。概念図で示すとこのようになります。

植物と動物のエネルギーを生み出す概念図
植物と動物のエネルギーを生み出す概念図

植物の光合成も、動物の他者から奪う行為も、いずれも「エネルギー獲得機構」といえます。

植物のウンチは酸素

植物のウンチは酸素
植物のウンチは酸素

生物が生存のために必要とするエネルギーにはさまざまな種類がありますが、ここでは糖をエネルギーの代表として考えていきます。
そして、動物は他の動物も食べますが、食べられてしまう動物も、元をたどれば植物からエネルギーを得ています(*1)。したがって、究極的にはすべての動物は植物を食べて生きているといえます。
この点を押さえたうえで、植物と動物の「生き様」をみていきましょう。

*1:http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/hikosaka_lab/hikosaka/brief.html

「生き様」は植物も動物も同じ

「植物は体内で糖をつくって生きる」「動物は他者から糖を奪って生きる」という説明を聞くと、植物と動物はまったく異なる生き方をしているように感じるかもしれません。
しかし、植物と動物の生存は次のようになっていて、両者がまったく同じ構成であることがわかります。

<植物の生存の構成>

二酸化炭素
酸素
植物+生存+糖(光合成)

酸素

二酸化炭素+水+太陽光

 
<動物の生存の構成>

二酸化炭素
酸素
動物+生存

排泄物

糖(食べる)

動物は、糖を食べて、酸素を吸って、二酸化炭素を吐いて、排泄物を排出して生存します。
植物は、空気中から二酸化炭素を得て、根から水を吸収して、太陽光を受けて、体内で光合成をして糖を生み出し、その糖を使って、酸素を吸って、二酸化炭素を吐いて、酸素を排出して生存します。

ここで注目したいのは、次の3点です。

ポイントA:植物も酸素を吸って、二酸化炭素を吐いている(呼吸している)
ポイントB:呼吸とは別に、植物は排泄物として酸素を排出している
ポイントC:植物は糖を食べる代わりに、二酸化炭素と水と太陽光を必要としている

植物は吸う酸素より吐く酸素のほうが多い

ポイントAについて解説します。
植物は地球に酸素を供給する生物ですが、生物として生きるためには、動物と同じように酸素を吸って二酸化炭素を吐く必要があり、これを呼吸といいます(*2)。
ただ、植物は、呼吸で吸う酸素より、光合成の結果排出する酸素のほうが多くなります。つまり、「吐く酸素>吸う酸素」「吸う二酸化炭素>吐く二酸化炭素」となるので、それらを相殺すると植物は「酸素を吐いて、二酸化炭素を吸う」生物になります。

ポイントBですが、概念図から、動物の排泄物に相当するものが、植物では酸素になっていることがわかります。
「植物目線」でみると、酸素はウンチなわけです(*3)。酸素をウンチとみなすことで、植物と動物の生存の構造が同じになります。

*2:https://benesse.jp/teikitest/chu/science/science/c00622.html
*3:https://katekyo.mynavi.jp/juken/16987

水も二酸化炭素もエネルギーではないのにエネルギーになる

ポイントCが、光合成の説明になります。
植物も、水と二酸化炭素と太陽光を体の外から得ているのですが、水も二酸化炭素もエネルギーではありません。そのため動物の場合は、水と二酸化炭素と太陽光しか得られないと死んでしまいます。
植物は体内に光合成を行うメカニズムがあるおかげで、エネルギーではない水と二酸化炭素と太陽光があれば生存できるのです。

光合成の正体

光合成の正体
光合成の正体

光合成はなぜ、エネルギーではない水と二酸化炭素から、エネルギーである糖をつくることができるのでしょうか。まるで無から有をつくっているようです。
しかし、無から有をつくることはできません。糖の生産の鍵を握るのは、太陽光です。太陽光が持つ光エネルギーが、糖というエネルギーを生む化学物質をつくっています。

水と二酸化炭素を「バラバラ」にして「加工」するとブドウ糖と酸素ができる

糖の代表であるブドウ糖の化学式はC6H12O6なので、CとHとOだけでできていることがわかります。
水はH2O、二酸化炭素はCO2なので、これもCとHとOだけでできています。ここから、水と二酸化炭素を「加工」すれば、ブドウ糖(糖)ができることがわかります。

H2Oを6個、CO2を6個用意して、これらを「バラバラ」にすると、Cが6個、Hが12個、Oが18個できます。
バラバラにしたものを組み合わせてC6H12O6(ブドウ糖)を1個つくると、Oが12個余ります。Oが12個あれば、酸素(O2)が6個できます。
このように、水と二酸化炭素から、ブドウ糖と酸素ができました。
化学式ではなく、あえて数式で表すとこのようになります。

(H2O ×6)+(CO2×6)=
(C×6)+(O×12)+(H×12)+(O×6)=
(C×6+H×12+O×6)+(H×12)=C6H12O6+(O2×6)

これは一見すると辻褄(つじつま)が合っているようにみえますが、実はそうではありません。

光エネルギーと光合成の仕組みが必要

水を入れたコップにいくら二酸化炭素を吹きつけても、ブドウ糖はできません。水と二酸化炭素を「バラバラ」にすることも、そこから「加工」してブドウ糖と酸素をつくることも、今のところ光合成でしかできません(*4)。
ただ、人工的に光合成をつくる取り組みも進められていて「かなりいいところ」まできているので紹介します。

*4:http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/hikosaka_lab/hikosaka/brief.html

人工光合成をつくることはできるのか

人工光合成をつくることはできるのか
人工光合成をつくることはできるのか

資源エネルギー庁は、人工光合成は温室効果ガス対策になると考えています(*5)。

*5:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/jinkoukougousei.html

光触媒と工場排出二酸化炭素を使う

光触媒という物質は、太陽光を受けると化学反応を起こします。光触媒を水につけて太陽光を当てると、水が水素と酸素に分離します。そこから水素だけを取り出して、工場などから排出される厄介者の二酸化炭素を合わせて化学的な処理を行うと、オレフィンというプラスチックの原料ができます。
これが、人工光合成です。

すなわち「光触媒+太陽光+水→水素+酸素」→「水素+二酸化炭素+化学的な処理→オレフィン」となり、光触媒と太陽光と水でオレフィンという化学物質を生み出しています。
これは、水と二酸化炭素と太陽光で、糖という化学物質を生み出す、植物の光合成と似ています。

そして人工光合成は、工場などから排出される二酸化炭素を使っている点もポイントになります。通常の方法でオレフィンをつくれば新たに二酸化炭素を生むことになるので、地球温暖化を進めてしまいます。しかし工場が排出した二酸化炭素を使ってオレフィンをつくれば、実質的に地球上の二酸化炭素を減らしたことになります。

光触媒とは

光触媒の「触媒」とは、他の物質の化学反応を手助けする物質です。
光触媒はすでに人工光合成以外の用途では実用化されています。光触媒を建物の外壁の表面に塗ると、空気中の有害物質が、太陽光と有害物質に反応して、無害な水(水蒸気)に変わります(*6)。

*6:http://www.biomimic-c.com/service/biomimic_coat/photocatalyst/

画期的な光触媒が誕生「夢の10%達成」

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と東京大学などは2020年6月に、人工光合成に使える、画期的な光触媒を開発したと発表しました(*7)。
人工光合成の成否を測る指標に、「太陽光を水素に変換する効率」(STH)があります。STHが10%以上に達すると、サハラ砂漠の3%の面積に光触媒を敷き詰めるだけで、全世界の消費エネルギーを補える水素を確保することができます。
今回の光触媒は、「特殊な環境下であれば」という条件つきですが、理論上STHが10%になることが確認されました。

電気を使えば、水を水素に変えることは簡単です。したがって太陽光発電でつくった電気でも水を水素に変えれば、「太陽光+水→水素」になります。しかしこれはとてもコスト高な方法です。
一方、画期的な光触媒が完成すれば「太陽光+光触媒+水→水素」となり、これは断然低価格で運用できます。
今後研究が進み、「普通の環境下でも」STH10%を達成できる画期的な光触媒を開発できれば、夢のエネルギーになるはずです。

*7:https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/00903/?ST=msb

まとめ~世界平和が実現するか

まとめ~世界平和が実現するか
まとめ~世界平和が実現するか

人間どうしで奪い合うのは、他者からエネルギーを奪い取るためです。
誰でもどの国でも簡単に高性能の人工光合成を使うことができれば、無尽蔵にある水と無尽蔵にある太陽光からエネルギーを得ることができるので、他人のエネルギーを奪う必要がなくなり、理論上は戦争がなくなります。獲得したエネルギーで食物をつくれば、飢餓も理論上なくなります。
人々が無料でエネルギーを得ることができれば、労働をする必要性も薄れます。労働から解放されるので、究極の働き方改革といえます。
人工光合成にこれほど大きな可能性が詰まっていることを考えると、道端の雑草が簡単に光合成をしていることがとてつもなくすごいことに思えてきます。

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