興味深い植物「ヘナ」について

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興味深い植物「ヘナ」について

今日は、ナツシロギクやパルテノライドのことではなく、植物つながりということで実に興味深いヘナという植物について書いてみたいと思いますので、少しお付き合い下さい。

ヘナは、ミソハギ科の植物です。
学名は「ローソニア イネルミス(Lawsonia inermis)」和名は「指甲花(シコウカ)」英名は「ヘナ(Henna)」インド名では「メヘンディ(Mehendi)」と呼ばれています。主にインド、ネパール、パキスタンなどの西アジア一体、太陽がよく照りつける水はけの良い土壌に帰省しています。

全長約1.8mから最大7.6mほどの高さにまで達するヘナの木。
約3年の歳月をかけて成長し、150cm以上を目安に20〜30cmほど残して刈り取られます。枝に対して左右対象に2枚のなめらかなちょうど槍の穂先のようなかたちの葉をつけ、葉の大きさは長さ2cm、幅1cmくらいの楕円形です。そして、香り高い約6mmの花を2房状に咲かせます。白から桃色、もしくは朱色、赤色へと色が変わる花びらが印象的です。花を咲終えると、青黒い鞘をつけ、その中には三角形の小さな種が入っています。ヘナの主な害虫はシロアリです。

ヘナの効用

自然界に生息する植物や生物のなかには、ナツシロギクのパルテノライドよろしく、まるで神様が意図的に目的をもち、その成分を処方したような不思議な力を備えたものが存在します。まさにヘナもそのひとつです。過酷な自然環境下で暮らす人々の肌や髪、そして健康を守るミラクルプランツなのです。

ヘナに含まれるローソン(ローソニア・アルバ)という成分には、殺菌、抗炎症、止血作用という薬草効果があり、古来より湿布薬ら傷薬、止血、火傷、吹き出物、皮膚病、打撲傷、生理不順などの予防や治療に効用があるといい伝えられてきました。同時に緊張した神経を緩和させることにも優れ、リラックス作用をもたらします。

その効用は医療の世界でも役立てられています。たとえば、花、葉、新生枝からの抽出物はハンセン病治療に活用されているそうです。1990年2月に発表されたインドの科学者B・チャンダヌビーケー氏の論文によると、ヘナのなかのローソンという成分が肝臓の毒素を取り除くのに有効であること、またヘナによって睡眠が深くなるということが報告されています。そのうえ、ヘナの葉に含まれるナフトキノンという成分が子宮の働きをを 整え、生理不順を治す効果があると記されています。

また、ヘナのもつローソンという赤色色素には、タンパク質と反応する特性があります。このことに着目したインドの人々は、古くから髪や肌などを着色することにヘナを使用してきました。薬としての役割だけではなく、暮らしを豊かにすることにもヘナは愛用されているのです。

ヘナの部位別効能表

寒性(体の熱を冷ます作用)、睡眠誘導作用
抽出液は香水のもとになる
精油は貴重なオイルである
防腐作用がある
花と種子の浸出液は頭痛や傷によい
花を詰めた枕には睡眠誘導作用がある
種子消臭作用がある
葉と種子は生理痛やおりものによい
大脳興奮作用があり、記憶精神機能改善が期待される
収れん作用
洗浄力
消臭作用
新鮮な葉を水で溶き、ペースト状にして染毛料に頭痛時やリウマチなどの痛みにペースト状にしたものを湿布薬として使用
足の裏に湿布すると下肢の灼熱感によい
軟膏にして傷に用いる
口内炎や咽頭炎にうがい液として使用
葉の煎じ液は、擦り傷、切り傷、炎症、火傷によい
薬の成分を油や水に抽出して使用(頭痛や皮膚の改善)
根部(樹皮)収れん作用
鎮痛作用
煎じたものは、黄疸、結石、難治性皮膚病によい

薬用としてのアプローチ

ヘナは自然がもたらす薬草として、インドの伝承医学「アーユルヴェーダ」やイスラムの伝統医学「ユナニ医学」によって古くより用いられてきました。同じく、北アフリカでも伝統的な治療薬となっています。
古代エジプトの象形文字で記された書物をはじめ、旧約聖書の「雅歌(ソロモンの歌)」や中世イスラムの世界が生き生きと描かれている「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」には、ヘナは「治療のためのハーブである」と記されています。また、モハメドは信者たちに「ヘナをイスラムの色として、また楽園のハーブとして使うように」と忠告し、自身の傷を癒やすためにヘナを愛用していました。
そして、インドの聖典に約12,000もの詩を紡いだヒンドゥーの聖人は「ヘナは鼓動、心の躍動の源であり、諸病気の敵である」と述べ、医薬品と科学の分野からもその優れた効用を見出していました。

日本では、ごく一部の人が白髪染めを目的として使用しているのが現状です。インドやイスラム社会ではこうした染毛目的だけではなく、そのさまざまな薬効を日常生活に取り入れています。自然の恵みがもたらすヘナをボディパックや入浴剤などに用い、子どもからお年寄りまで、幅広く愛用しているのです。

それでは次に各国のヘナの「処方箋」ともいうべき、ユニークで興味深い薬効としての使用方法を見てみましょう。

各国のヘナの「処方箋」

ヘナペーストを肌に塗布することで、葉に含まれる活性成分が皮膚表面に付着するカビやバクテリアから肌を守ります。同時に収れん作用が働き、解熱や頭痛の緩和、ヒステリーや凶暴な気分を和らげる作用もあるとされています。

インド、ネパール、ジャワ地方
ヘナの葉を切り刻んだものを煎じ、冷やした液をヘルペスの発疹に塗布しています。またヘナのアルコール抽出物は、サルモネラ菌、大腸菌のほか、経口性の伝染病菌に対しマイルドな抗菌性を発揮するそうです。

イエメン
身体をバラの香水で洗い、ヘナペーストで手足を染めるなど、年齢にかかわらず、肌のしなやかさと滑らかさを保護するために使用されています。

ペルシャ湾周辺やクエート
天然真珠業者たちもヘナペーストを愛用しています。櫓を漕いだり、網を引いたりするときにできる擦り傷やマメを防ぐために役立てています。

西アフリカ マリ
連日38℃以上の高温のなかで暮らす西アフリカのマリの人々。足のかかとにヘナを塗り、冷やすことで地面から照り返す暑さを封じ込めるのだとか。同じく、アラブ連盟国のベドウィンの人々は夏場の砂の熱から身体を保護するためにヘナで足裏を染めます。また暑さからくる頭痛や目の炎症を抑えたり、ボール状のヘナペーストを掌に置き、子どもの発熱を下げる「自然の寒剤(解熱剤)」として愛用されています。

アラブ
アラブの医学書には、新鮮なヘナの花の香りを吸引することで不妊や精力減退を治すと記されています。

マレーシア
ヘナを煎じて喉のただれやかすれ声を治すうがい薬として使用。そのろ過液は、下痢や赤痢の症状をやわらげるものとして重宝されています。

アルジェリア
ヘナの葉をサンダルに忍ばせ、防臭剤として使用しています。

ナイジェリア
ヘナの花の精油を肌に刷り込み、発汗を抑え、同時に身体の香りづけとして愛用しています。

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